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原田はとる(著者)×須藤安寿(インタビュアー)



須藤安寿:
「あじさいのひと」、執筆お疲れさまでした。
今回の作品には随所に原田先生のこだわりが感じられたように思うのですが、いかがでしょう?

原田はとる:

キャラクター全員が持つ「執着」を常に念頭に置いて執筆していました。紫郎が直に対してはもちろん、ゆきが紫郎に対して抱いているものも存在感があって、読者さんの心から離れないような、そんな印象深いものにしようとずっと考えていました。もちろん、ただひたすらに誰かを思い、自分の物にしてしまいたいという願望を抱きつつも、その感情に対する葛藤も大切なポイントとして書いたので、その辺りも感じて頂けると嬉しいなと思います。

須藤安寿:
あかつき文庫での一作目「きみはぼくの天使」からガラリと変わって、今作はしっとりした和風の雰囲気ですよね。現代ではあるのですがどこか幻想的な世界観、そしてタイムスリップ……と、キャラクターを取り巻く背景にもこだわりがあったのでは?

原田はとる:
元々ローファンタジーが好きなんです。ガチガチのファンタジーも面白いんですが、現実世界の中でひょっこりと小さな非現実と遭遇して……みたいな。その要素と、最初から書こうと決めていた「年の差BL」という属性を組み込んだら面白いお話が生まれるのではないかな、と思い、今作もがっつりという程ではないけれど、SF(すこしふしぎ)っぽい雰囲気にしようと作り込んで行きました。タイムスリップという設定もそこから出てきたものです。

須藤安寿:
SF(サイエンス・フィクション)ではないのですね(笑)。
直は明治時代からやってきた少年という設定ですが、明治という時代を選んだのは何か理由があったのですか?

原田はとる:
タイムスリップしてくる時代を明治時代にしたのは元々私自身が好きな時代だから、というのもあります。明治という名前の響きも可愛いですし、レトロな雰囲気も好きで、色々妄想のしがいがある時代だなあと思ってます。
もう一つ理由としては、江戸時代より前だと離れすぎてよりファンタジー色が濃くなってしまうし、かといって現代に近いと逆にファンタジー色が薄まってしまうかも…と懸念したためです。明治中期も面白い時期だとは思うのですが、初期にしたのは直のキャラクターを考える中で、時代の変わり目に様々な苦労を重ねた子だと更に話に深みが出るかなあと思い、設定しました。

須藤安寿:
全編を通して紫陽花が印象的でした。もはやこれは小道具ではなく、キャラクターのひとり、世界観のひとつと言ってもいいのではないか……と。キーとなる要素として紫陽花を選んだのもやはり思い入れがある花だったからでしょうか?

原田はとる:
2作目を、というお話を頂いた時期がちょうど紫陽花が咲いていた時期で、花瓶に綺麗に活けられた一朶の紫色の紫陽花を目にする機会があったんです。外にはたくさん色とりどりの紫陽花が咲いている中、その一朶だけ花瓶に活けられて室内に置かれているのを見て、紫郎が直を連れてくるというイメージが浮かんできました。それが「あ、この二人がどうなるか、知りたいかも」と最初に思った瞬間でした。あの花瓶の紫陽花を見なければ、紫陽花どころか直や紫郎も生まれなかったと思います。

須藤安寿:
キャラクターについてはいかがでしょう? 著者である原田先生から見た紫郎、直、そしてゆき……それぞれのキャラクターへの思い入れや萌えポイントなどをお聞かせください。

原田さとる:
普段十代を主人公に置くことが多いので、二十代後半の紫郎を主人公にするのは自分でも思い切ったかも……と思っていました。キャラクターとして大人のオニーサンは結構好きなタイプなんですが、メインに据えるということはなかなかなかったもので……。が、実際書いてみると結構自分の中で馴染めていたので書きやすかったです。
紫郎はとにかく見た目は(強調)大人、でも中身はそれに反して所々で子供っぽい人です。そのギャップが紫郎の萌えポイントの一つだと思うで、特に直とのシーンはそのギャップを意識して執筆していました。
対する直は幼さと大人っぽさの間を行き来するようなイメージで執筆しました。基本しっかりしている子なので、極端に幼くなることはありませんが、ふと見せる仕草だったりつい出てしまう台詞だったり、そういったところで直の幼さを見せるようにしています。作中で紫郎との恋を通して大人になっていく彼を書くのはとても楽しかったです。……ただ、身近にいる紫郎がいい大人とは言えないので、本当の意味での大人にはなりきれていないかもしれません……でもそれも、直の魅力になっていくのかも。
メインではありませんが、紫郎の幼馴染みのゆきも思い入れのあるキャラクターです。三角関係と幼馴染みは私の好きな萌えポイントでもあるので、ここもメインに負けずに力を入れよう!と頑張りました。ゆきは決して悪人ではなく、むしろ直のようにとても純粋でまっすぐな人です。紫郎との関係は本当に少しズレてしまっただけで、本来は紫郎と直のような関係になり得た可能性も十二分にあると思っています。彼が紫郎とどうなっていくかは、是非見届けて頂ければと思うんですが、これも一つの愛の形として読者さんに受け止めて頂ければ嬉しいなあと思います。メインの二人程表立っている訳ではありませんが、ゆきの視点で物語を見てみるのも『あじさいのひと』の楽しみ方の一つかもしれません。

須藤安寿:
では最後に、このオフィシャルページに来てくださった読者の皆さんにメッセージをお願い致します。

原田はとる:
紫陽花の咲く季節からはかなりかけ離れた頃のリリースとなってしまいましたが、本作を通してほんの少しでも、梅雨の合間で展開する年の差と時代差を越えた恋物語を味わって頂ければと思います。皆さんにとって、紫陽花が咲く度に少しでも思い出して頂けるような、そんなお話になることを願います。
それから、前作の時も似たようなことを言ったと思うんですが、今回もイラストレーターの広瀬さんの表紙絵が本当に!美しいです。これ以上ないくらいこのお話を視覚化して下さったと思っております。是非、本編を読む前に表紙の二人を愛でて、読了後に再度愛でて頂ければと思います。

2017.01