あじさいのひとバナー
花が望むのはただ一つ、愛しいひとの傍で咲くこと。
止まない雨の中、私はいつまでも、きみだけを待っている。

STORY

誰かを特別に思ったことなど一度もない、あるのは性欲に溺れた記憶と、ひとかけらの罪悪感のみ。
そんな過去を持つ青年・戸張紫郎は紫陽花の傍で倒れていた少年・直を見つける。目覚めた直から告げられたのは、彼が明治時代を生きる人間である、という衝撃的なものだった。そんな直と共に生活する中で紫郎は「彼が欲しい」という己の衝動に突き動かされながら、生まれて初めての恋に焦がれていく。やがて、その思いは恋を知らない直を翻弄していき――年齢も時代もかけ離れた二人の、重なり合う思い。紫郎の背後に付き纏う、過去のしがらみ。色を変えて行く紫陽花の中、二人がたどり着く結末とは。


CHARACTER

オフィシャルページ用キャラ1戸張紫郎(とばり しろう)
28歳。官能小説家。田舎の古家で一人、ひっそりと暮らしている。
かつては己の性欲のままに行動し、誰彼構わず関係を持っていた。現在はそれらの経験を小説の題材としている。
儚げで落ち着いた外見をしているが、親しい間柄に対しては子供っぽさを滲ませることもある。生活力がなく、幼馴染みのゆきに世話を焼かれている。






オフィシャルページ用キャラ2直(なお)

18歳。明治時代から時を越えて現れた少年。
明治時代では呉服屋で使用人として働いている。家事全般が得意で、戸張家でもその本領を発揮する。
奉仕精神に溢れた頑張り屋。時折年齢よりも幼い表情や仕草を見せることがある。






朝日行成(あさひ ゆきなり)

25歳。紫郎の幼馴染みで、近所の紫陽寺の僧侶。
時折、紫郎の家に現れては彼の身の回りを世話している。
気さくで人懐っこく、誰に対しても常に愛想の良い笑顔を浮かべている。紫郎に対しては幼馴染みの枠を越えた、特別な感情を抱いている。


SAMPLE

 そして、私たちの距離も私が直の手を取ったことにより縮まっていた。
 手を繋ごうとした時、直はとても困った顔をしていた。最終的には繋ぐことを了承したものの、頑として私の横に並ぶことはしない。
 ちらり、と直を見てみると、昨日と同じく青の紫陽花に惹き付けられながらも、その顔は昨日のように明るいものではない。私に取られたその手も一応握り返してはいるものの、少し気が抜けたらすぐに離れてしまいそうなくらい、弱々しい力だ。
「つまらないか、直」
 そう尋ねると、直が目を見開いてこちらを向き、激しく首を横に振った。
「い、いえ」
「そうか? その割に顔色が冴えないが」
「その……慣れなくて。幼い兄弟としたように、紫郎さまとこうして手を繋ぐ、ということが」
 躊躇いながらもその胸の内を明かしてくれる素直な彼が、また一段と愛おしく感じられて、つい手に力が入る。
「きみと触れ合っていると、落ち着くんだ。いくらでも触れたくなる」
「え」
「きみは、私にとってなくてはならない存在なんだよ」

DETAILS

あじさいのひと (共幻あかつき文庫)

あじさいのひと (共幻あかつき文庫) [Kindle版]

著者 原田はとる
イラスト 広瀬コウ
発行日    2017年01月27日
発行者     共幻あかつき文庫
販売価格 580 円
AmazonKindle


REVIEW



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高波一乱 編集者



あじさいが彩る美しい世界の中で、淫靡な葛藤がひときわ映える官能作品です。
原田はとる先生の前作『きみはぼくの天使』では担当をさせて頂きましたが、今作でも新鮮な驚きを感じました。
繊細かつ色気のある表現力と、ストーリーの安定感は随一のものです。
広瀬コウさんの表紙イラストが素晴らしいですね。イメージそのままに作品世界に入り込んでいけました。



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天都とほる 共幻令嬢・あかつき文庫編集長



二人の関係は純粋に見えてひどく淫らだ。色彩的な美しさを見せたかと思うと、不意に情念の渦で襲い掛かってくる。
昭和初期を感じさせる古めかしさと輝きの中で、秘め事のように紡がれる如何わしさ。原田はとるの、妙な世界。
まるでロマンポルノを文学で楽しんでいるような感覚だった。
一作目を知る人はあまりの幅に驚くだろう。ここまでの幅を持つ作家は、少ない。



広瀬コウ



広瀬コウ イラストレーター


原田先生の前作「きみはぼくの天使」とはまた一味違った、紫陽花のようにしっとりとした文章が心地よい作品です。
そして紫郎の艶のある色気と、真っ直ぐな直の恋心、時代を超えた二人の結末に読み進めれば読み進めるほど作品に惹きつけられました。
表紙では、恋する二人の幸せな一時を切り抜いたような雰囲気をイメージして描かせていただきました。
二人がずっと幸せに微笑み合っている事を、願っています!



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須藤安寿  共幻あかつき文庫編集


精緻に作り込まれた箱庭のような美しい世界。紫陽花に彩られた愛の形を紡ぎ出す、文学的な語り口。
……そして、BL的おサービスもいっぱいです!
登場人物ひとりひとりが愛情を求めてもがいている。誰かのために大人になろうとしている。その一途な気持ちが、ときに甘く、ときに痛くて、切なさがこみ上げてきます。
まさしく夢のひとときを味わえる一作でした。